高血圧症が及ぼす歯科治療時のリスクと対策について
2012. 8.31
健康のバロメーターとして血圧の数値がよく用いられます。
高血圧の基準値は最高血圧140(mmHg)、最低血圧が90(mmHg)以上とされておりますが、基準値以上で高血圧の治療を受けている方も、カリエス(虫歯)あるいは歯周病(歯槽膿漏)などのために、歯の治療が必要となる場合がしばしばあります。歯の治療中には血圧が上昇しますが、高血圧の方は、より血圧があがる可能性があります。歯科初診時の問診でも、高血圧の有無あるいは降圧内服薬の有無を確認し、治療中の血圧上昇には注意が必要です。
高血圧疾患患者は、歯科治療中の痛みや不安などのストレスで血圧が大きく変動する特徴があります。これを防ぐには、治療に対する不安があれば、説明を十分に受けてコミュニケーションを取りながら、安心してリラックスしながら歯科治療を受けることが大切です。また、歯の治療時には時として局所麻酔の注射を行いますが、一般的によく使用される局所麻酔薬には、歯の治療時の歯肉からの出血を抑さえたり、局所麻酔薬の効きをよくするためにエビネフリンという薬が少量添加されています。しかし、この薬は少量でも心拍数を増加させる作用を有し、投与量が多くなると血管を収縮させ血圧を上昇させます。一般的には、血圧が多少上昇しても心配いらないと思いますが、極端な血圧上昇のために、中には歯科治療時に歯肉からの出血が止まりにくかったり、脳卒中を発症したりする危険性もあります。そのために当医院では、抜歯や歯の治療で麻酔をする場合は必ずモニターを装着して、治療中何度か血圧測定をしています。なお、最高血圧180(mmHg)、最低血圧 110(mmHg)以上のときは血圧が下降安定するのを待って歯科治療を行うほうが安全です。また、高血圧が長期間続くと、全身に広範な動脈硬化があると考えられるので、内科受診を優先することが望ましいと考えます。
血圧値は、心臓や血管の病気のリスクと相関関係にあると言われていますので、安全に歯科治療を受けていただくためにも、日頃の血圧管理が大切になってきます。そのため、高血圧の方も、降圧薬を内服し血圧を正常レベルまで下げておけば、歯の治療中に大きく血圧が上昇する危険性は少ないと思います。日頃から血圧を適正レベルにコントロールするとともに、歯の治療を行う当日も忘れずに降圧薬を内服することが、治療中の血圧上昇をおさえるために重要だと思います。