咀嚼運動による食物の動態と咬合面形態について
2004.11. 9
咀嚼は上下顎の歯により、食物を噛み砕くとともに、唾液と混ざって嚥下の可能な状態にすることを言います。しかし食物を味わい摂取するためには食物を上下歯列に囲まれた口腔内へ送り、嚥下に至るという一連の過程がスムーズに行われているかどうかが重要になります。
咀嚼の進行に伴い、噛み砕かれた食物は歯列のほっぺた側から舌側へと移動し上下歯列に囲まれた口腔内に蓄積するという、咀嚼の目的に沿った食物の動きの様子が明らかになってきました。
実際の咀嚼運動は開口後、側方から噛み込み、上下顎を噛みあわせた位置に達する直前の2〜3mmは、側方から上顎の歯にそって滑走運動をします。その側方から上下顎を噛み合せた位置へと噛みこむ際の上下顎の咬合面間の間隙の変化と食物の動態について見ていきましょう。開口した時に、咬合面上に乗せられた食物は、噛み合せた位置に近づくと、上下顎の咬合面間の間隙に取り込まれ、さらに下顎がかみ合わせた位置に近づくとその間隙が小さくなるとともに、つぶされ、砕かれながら咬合面間を流れます。このとき図1の断面図に示すようにほっぺた側ならびに舌側には流れず、前方か後方のいずれかに流れようとします。しかし図2の断面図に示すようにほっぺた側、後方は閉じているため食物は前方舌側方向に流れて口腔内に移動していくと考えられます。

    図1
図左                   
ほっぺた側から舌側の断面における咀嚼時の咬合面間の間隙と食物の関係
図右
前方方向断面における咀嚼時の咬合面間の間隙と食物の関係

これらのことにより咬合面の形態が悪いと咀嚼時に上下顎の咬頭による間隙の閉鎖がなされず咀嚼によって噛み砕かれた食片の流れが変わりほっぺた方向にも流れ、歯列のほっぺた側のつけねに落ちてしまうとその食片は容易には嚥下されないため、そのまま放置すれば虫歯の原因にもなってきます。

われわれ人の咀嚼運動は図3のように食性に合わせて外側から内側への側方運動をしています。この側方運動に合わせて食片がくだかれ、口腔外にあふれることなく舌側に移動していくように臼歯部の咬合面形態が作られているのです。


   図2
臼歯部における咀嚼様相の正面からみた模式図
矢印の示す咀嚼運動パターンによって食物は砕かれ、ほっぺた側→咬合面→舌側の口腔内へと移動される