ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死
2009. 8. 3
ビスフォスフォネート(BP)系薬剤と顎骨壊死
BPは悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症や乳癌、前立腺癌などの骨転移、骨粗鬆症に対して投与され、骨痛や病的骨折の予防や治療、癌治療により誘発される骨量減少の改善など臨床的に有用性の高い薬剤です。しかし、最近とくにBP静注薬使用における副作用として顎骨壊死の発症が問題となっています。発生頻度は低いものの、その多くは抜歯などの歯科治療を契機として発症し、きわめて難治性です。
日本では2007年末までにBP静注薬で100例程度のBPに関連した顎骨壊死が報告されており、その後も明らかに増加しています。

・ BPに関連した顎骨壊死の症状
疼痛と感染を伴う持続性の骨露出、顎が重い感じやしびれ、歯肉腫脹、排膿、歯の動揺が一般的です。疼痛を伴わず、無症状のこともあります。抜歯や歯周治療を契機に発症することが多く、下顎骨に2/3、上顎骨に1/3の割合で発生します。顎骨壊死が進行すると、疼痛や感染が増悪し、病的骨折を起こしたり、皮膚瘻孔を形成します。

・ BP治療開始前の留意点
感染源を減らすために、抜歯、歯周治療、義歯などの歯科治療は前もって行っておきます。しかし、侵襲の大きいインプラントや埋伏歯抜歯は避けたほうがよいでしょう。また不完全埋伏歯や被覆粘膜の薄い骨隆起は前もって除去し、1ヶ月の骨治癒期間を待ってからBP治療を開始するよう、また可能であれば歯科治療が終了するまでBP処方医に投与の延期を依頼します。

・ BP治療中の留意点
歯科医による骨露出の有無のチェックとX線診査を行います。口腔内清掃を励行し、抜歯、歯周外科、インプラントなど顎骨に侵襲の及ぶ口腔外科処置は極力避けるようにします。義歯の装着は可能ですが、過剰な圧がかからないように注意が必要です。口腔外科処置に際してのBP投与中止に関しては、経口薬の場合、BP処方医と相談の上、少なくとも3ヶ月間は服用を中止し、処置後も骨の治癒傾向が認められるまでは中止します。

・ BPに関連した顎骨壊死の治療法
有効な治療法は未だ確立されていないため、保存的療法が推奨されています。壊死組織の除去などの処置はむしろ症状悪化を招くことがあります。BPの投与を中止するか、骨吸収抑制作用の少ないものに変更可能か相談します。疼痛抑制を行い、骨露出の拡大、二次感染を防ぐために抗菌薬の長期投与と洗浄を行います。